Kamis, 09 Januari 2020

寄生する家族と寄生される家族の物語 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』 - Newsweekjapan

<好対照な2つの家族を描いてカンヌ最高賞に輝いた『パラサイト』は、ジャンルを自在に行き来するポン・ジュノ監督の最高傑作>

韓国の映画監督ポン・ジュノは、特定のジャンルに簡単に分けられるような作品を作らない。過去の作品は、犯罪サスペンスや怪獣映画、SF冒険映画のように見えるが、実はジャンルを超えた内容になっている。

そうかといってポンの作品を、ジャンルという概念のパロディーや脱構築と見なすべきではない。ポンが他の監督と一味違うのは、1つの作品あるいは1つの場面を、映画のあるスタイルから別のスタイルにスムーズに変容させる不思議な能力だ。ヘビが脱皮するように、役割を終えたジャンルを脱ぎ捨てる。

生物の比喩を使ったのは偶然ではない。絶えず変化するポンのスタイルは有機的な性質を感じさせ、作品は作られたというより育てられたかのように見える。

アルフレッド・ヒッチコック監督のように、ポンは観客の生理学的な反応を自在に操り、人間に生来備わっている哀れみや恐怖、不安、共感といった感情を刺激し、見る者の心臓の鼓動を自由に速めたり抑えたりできる。

しかし、彼のキャラクターは決して単なる象徴やゲームボード上の駒ではない。ヒッチコックのように俳優を「家畜」と呼んだり、キャラクターの生死を冷たく見守るようなところはない。

ポンの最高傑作と言えそうな新作『パラサイト 半地下の家族』は、現代のソウルに暮らす貧しい家族を描く社会的現実主義ドラマとして始まる。息もつかせぬ2時間12分の間、あるときはブラックコメディーかと思えば次は社会風刺へ、そしてサスペンスへ、ドタバタ喜劇へと何度も変化する。その間、登場人物への観客の理解と愛着は深まり続け、彼らの最終的な運命は悲劇の力で観客を圧倒する。

『パラサイト』は経済的不平等と、資本主義がもたらす暴力への痛烈な批判とも受け取れる。だが機転の利いた演出のおかげで、「社会派映画」だとは決して感じさせない。

家族の秘密が暴かれる

この映画の中心となるキム一家の状況は、彼らが住む狭い半地下のアパートの場面だけでよく分かる。インスタント食品の容器が散乱し、虫がうごめき、洗濯物があちこちにつるされた部屋で、4人家族が折り重なるように暮らす。一家は金を稼ぐために近所のピザチェーンの配達用の箱を組み立てているが、その仕事もいつなくなるか分からない。

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